はじめに
日本の義務教育ではほとんどお金の勉強をしません。
ですので、多くの人は自分が支払っている税金の計算の仕方がよく分かっていません。
自営業の方は確定申告で勉強をせざるを得ないかと思いますが、会社員の方は会社が計算をしてくれます。
税金のことを考えるのは年末調整のときくらいでしょうか。
本記事では、常識として知っておくため、自分が損をしないためにも、所得税がどのように計算されているかについて、
実際に源泉徴収票と照らし合わせながら解説していきます。
新入社員などの初心者を想定していますので、最低限の内容にてご説明します。
源泉徴収票の各項目の計算方法
最初に、昨年度分の源泉徴収票を用意しましょう。
少し前までは紙でもらっていた方が多いかと思いますが、今はシステムでダウンロード等できるようになっている方も多いでしょう。
それでは、左上から順番に解説していきます。
支払金額:①
こちらは、給与収入です。
年収を訊かれた時に答えるやつですね。
上図のものだと、種別に「給与・賞与」と書いてあるので、
12か月分の月収と、1年間のボーナスの合計額になります。
給与所得控除後の金額(調整控除後):②
こちらは、「支払金額」から給与所得控除額を差し引いた額になります。
それってつまり、給与所得です。
以下の式が成り立ちます。
給与収入 – 給与所得控除額 = 給与所得
そもそもなぜ控除してくれるのか?について解説します。
自分がスーパーの店長だとしましょう。
あなたは1年間で1000万円売り上げました。
ですが、仕入れ額や人件費などで900万円を費やしました。
それなのに、所得税を求める時に、1000万円に対して所得税率をかけられたら困りますよね。
実際はそうはならず、経費を差し引いた100万円に対してのみ、所得税が発生します。
それでは、会社員にとっての経費ってなんでしょう。
よく分からないですよね。
なので、経費の代わりに給与所得控除を引いてくれます。
それでは、給与所得控除額はどのように決まるのでしょうか。
収入金額によって決まります。
収入金額とは、「支払金額」です。
下の表の式に当てはめて計算してみてください。
「給与所得控除後の金額(調整控除後)」の額と一致するかと思います。
所得控除の額の合計額:③
こちらは、項目名の通り、所得控除額の合計額です。
給与所得控除と項目が異なるのは、制度が異なるからです。
給与所得控除は、会社員にのみ適用されますが、所得控除については個人事業主やフリーランスにも適用されます。
所得控除はそれぞれの状況に応じて適用有無が異なり、その多くは年末調整などで申告が必要になります。
扶養している配偶者がいるから引いてくれる、生命保険に入っているから引いてくれる、といった感じですね。
所得控除には全15種類あります。
- 基礎控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 医療費控除
- 寄附金控除
- 社会保険料控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- ひとり親控除・寡婦控除
- 勤労学生控除
- 障害者控除
- 雑損控除
上で「それぞれの状況に応じて適用有無が異な」ると記載しましたが、ほぼ全員について、引いてくれるものが2つだけあります。
それは、基礎控除と、社会保険料控除です。
この2つについて、解説していきます。
基礎控除
これは、特に理由なく、ほとんどの人について、控除してくれるものです。
控除額は所得金額によって異なります。
ここで一つ、少し話が逸れますが、
「103万円の壁」って聞いたことはありますか?
パートやアルバイトなどで、103万円以上稼いだら扶養から外れちゃうから超えてはいけないよ、と言われたりするものです。
この103万という数字は、給与所得控除額の55万円と、基礎控除の48万円を足したものから来ています。
つまり、給与所得控除と基礎控除をした結果0円以下になる人は稼いでいないものとみなすから扶養に入ってもいいよ、という考え方です。
社会保険料控除
これは、自分や配偶者などのが支払った社会保険料について、その全額を所得から控除することができる、というものです。
そしてその社会保険料は源泉徴収票に記載されています。
社会保険料等の金額(⑤)欄になります。
対象となる社会保険料は、健康保険・国民年金・厚生年金保険・雇用保険などです。
細かいところを挙げたら他にもたくさんありますが、
多くのサラリーマンの方だと、これくらいでしょうか。
毎月の給与明細の控除欄を見てみてください。
所得税と住民税以外は、基本的にこの社会保険料に含まれます。
それぞれの計算方法はここでは割愛します。大変な量になりますので。
とりあえず、毎月給料から引き抜かれている社会保険料は所得から控除して良いんだな、と覚えておいてください。
源泉徴収税額:④
この項目は正に、所得税額(+α)を示します。
所得税額は以下の式で求められます。
所得税額 = 所得課税金額 × 所得税率 – 控除額 (100円未満は切り捨て)
所得課税金額は、源泉徴収税額には出てきません。
ですが、以下で算出することができます。
所得課税金額 = 給与所得控除後の金額(調整控除後)(②) – 所得控除の額の合計額(③) (1000円未満は切り捨て)
あとは、所得税率と控除額ですね。
この「控除額」とは、今まで出てきたものとは別物です。
さて、所得税率と控除額は所得課税金額によって異なります。
以下を参照ください。
これで、所得税額が求まりました。
ただ、これでは源泉徴収税額の「源泉徴収税額」の値より少し少ないでしょう。
平成25年分の所得税より、復興特別所得税なるものが創設され、所得税額に上乗せされることになりました。
復興特別所得税の計算式は以下の通りです。
復興特別所得税 = 所得課税金額 × 2.1%
所得税と復興特別所得税を足したら、やっと源泉徴収税額が求まります。
所得税額 + 復興特別所得税 = 源泉徴収税額(④)
さいごに
本記事では、会社員が最低限知っておいた方が良い、源泉徴収票の各項目の計算方法について解説しました。
自分事にすると、もう少し勉強してみようと思いませんでしたか?
生命保険料控除や配偶者控除など、対象の方も多いと思うので、一度確認してみても良いかもしれないですね。
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